受賞者インタビュー

前職が北海道せき損センターの作業療法士であり、現在は脊髄損傷特化型の在宅支援事業所を創設したSCI village officeの佐藤航平代表に起業に関わる内容や将来の展望をインタビューをしました。

ー 最初にお聞きしたいのは、安定して実績もある北海道せき損センターを退職してまで、リスクのある地域での起業で脊髄損傷特化型の事業を選択した理由は何でしょうか?

佐藤代表:
それは病院を退院した患者さんの状態が自宅に帰ってから悪くなったり、地域で寝たきりになって活動できていない現状を目の当たりにし、「何とかしないといけない」という思いで起業を選択しました。

ー 佐藤さんが起業するといった時の職場の同僚の反応はどうでしたか?私が外から見ると北海道せき損センターのエースとしてご活躍されていたので、退職するのを反対されませんでしたか?

エースか分からないですが(笑)色々な意見はありましたが、基本的に職場の同僚は賛成してくれました。

ー 佐藤さんが退職することで、職場への影響はないのでしょうか?

私が退職しても後輩がしっかりと仕事をしてくれるので心配はありません。

ー 実際に起業して気付かされたようなことを教えてください。

人の面ですね。求人、面接、採用などもすべて自分で対応する必要がありますし、他にも人の面はやることが多いです。サラリーマン時代は仕事が多くても自分で対応できていましたが、起業してから休みはなく仕事をしても仕事が終わらないので、スタッフに任せる必要性を強く感じています。

ー 起業して大変なことはあるのではないでしょうか?

やはりスタッフの退職は本当に辛い経験です。また売り上げがダイレクトに出るので、プレッシャーが大きいですね。すぐに解決できる課題でもないので焦ることも多いです。

ー 起業して何か失敗から学んだことはありますか?

新しく入ったスタッフに厚く関わっていくことですね。病院で看護師としてある程度の経験があれば、大丈夫だろうと考えて任せていました。技術面は問題にならないのですが、訪問での人とのかかわり方とケアのスピード感は病院とは違いました。

ー スピード感というのはどういうことですか?

訪問は時間が決まっているので、かなり効率的に業務を進める必要があります。特に時間のかかる排便ケアは物品の用意、ケアの具体的な流れを決めて、効率的に動くために色々な準備が必要になります。病院だと17時までにという大きな枠組みになり、働き方が違いますね。

ー リハビリスタッフでは訪問の中で課題になるようなことはありますか?

看護と違って脊髄損傷の技術面が課題になりますね。

ー 脊髄損傷のリハビリ経験がないスタッフの対応はどうされているのでしょうか?

まず、私と一緒に同行から開始します。しっかりと情報共有して、このポイントを抑えておこうというのを最初のステップとして設定するようにしています。一人で訪問する時には必ず介入する内容を数値も含めて具体的に説明し、あとはスタッフとのコミュニケーションを密にして自由に話せる関係性を構築したら、最後はスタッフを信頼して任せています。

ー 佐藤さんが事業運営で1番、大切にしていることを教えてください。

利用者さんの「やりたいこと」と「外出」ですね。

ー それを実現するための佐藤さんが思い描くケアの形はあるのでしょうか?

本当は包括的に事業運営して、利用者さんが「やりたい」って思ったときにすぐに動ける体制を作るのが最終地点だと考えています。もちろん、できるかはわかりませんが、できるだけ近づきたいですね。現状としては、ヘルパー事業所を開設して移動支援の事業指定も取得しております。まだ稼働したばかりなので、動くのはこれからになりますね。

ー 自宅だけのサービスではないようにご尽力されているのですね。

家に帰り生活するというのは自宅内だけではなく外出を含めて考えています。今は、安心で安全な生活を送るための看護やリハビリはできるようになってきていますが、外出や社会参加などはこれからですね。

ー これから新規事業などは考えているのでしょうか?

色々と考えていますね。例えば、障がいがある方が入れる温泉施設がないので、ヘルパーと一緒に入れるようなことができるといいですね。宿泊場所は車いす対応できてもお風呂には対応できていないのが現状です。また、仕事をつなぐようなこともやってみたいと考えています。

ー 最後に今後にむけた目標やビジョンがあれば教えてください。

北海道せき損センターを退院した後の拠点は長期的なビジョンとして考えています。そこでは、家に帰ることだけが目標ではなく、社会的に出ていくようなインパクトのある仕組みを創りたいと考えています。

ー 壮大なビジョンですね。

北海道せき損センターが札幌へ移転する話も出ていますので、このタイミングも見据えています。

ー 短期的な目標などはありますでしょうか?

ご依頼があっても移動の問題で訪問できない方がいますので、どうにか解決できないかと考えています。事業が拡大していけば同じ地域で何人かを回って訪問できる可能性があるので、多くの脊髄損傷の方を訪問できる形を目指していきたいですね。

佐藤代表が創設したSCI village office:
https://www.scivillagejiu.com/%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E6%A6%82%E8%A6%81

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